2011年4月21日木曜日

ジョン・ガリアーノの行く末はいかに?


こんにちは。エディター&スタイリストの近藤です。


“ジョン・ガリアーノ、「Dior」を解雇される”というビッグ・ニュースが最も話題となった今回のパリコレ。
まさに世界を駆け巡ったニュースなので、すでにご存知の方も多いと思います。
私が教鞭をとっているファッション専門学校の1年生でさえ、さすがにガリアーノの名前はわかったようで(アレキサンダー・マックイーンって誰?と言っていたのですが。。)。

最後となった「Dior」のショーに、彼自身の姿はありませんでした。
まずクリスチャン・ディオール社のCEO、シドニー・トレダノ氏の厳粛なスピーチに始まり、そしてそこにあったのは、これまで彼を支えてきた“小さな手”と呼ばれるアトリエのスタッフの姿だけ。
なかには涙ぐむスタッフもいて私も思わずもらい泣き……この歴史的なショーのフィナーレを共有した観客は、みな何ともやりきれない焦燥感と一抹の悲しみ、そしてひとつの時代が終わったことを直感的に感じたのではないでしょうか。


酒に酔った勢いの反ユダヤ的暴言で、これまでの栄光を一瞬にして失うことになってしまったガリアーノのラスト・コレクション。
(しかし、この模様の映像露出に関しては一部陰謀説もある)
それが皮肉にも、とても素晴らしかったのです。
エドワーディアンスタイルやパティ・スミスからインスパイアされた英国スタイルは、まさに彼らしいニュー・ロッククチュールを物語っていました。


「Dior」のショー会場となったロダン美術館は、ものすごい報道陣とファンの数でした。
そこに“王は去った”というプラカードを持った、毛皮を纏ったキリストさながらの男性の姿も。
『ル・モンド』紙のようにこの一連の騒動に関してノーコメントのところもあれば、イタリア版『VOGUE 』のフランカ・ソッツァーニ編集長や『パープル・ファッション』のオリヴィエ・ザームのように公然とガリアーノを擁護する発言もあり。
戸惑いを隠しきれないファッション業界ではあるものの、これまでの彼の天才的手腕に惚れ込んでいた人々も確かに存在していたわけで。


それからしばらくたち、最近になってまた衝撃的なニュースが流れました。
今度は、彼自身の名を冠したシグニチャー・ブランド「ジョン・ガリアーノ」からも身を引くことになってしまったと。
『デイリー・テレグラフ』のヒラリー・アレキサンダーも、即座にTwitterでそのことについてコメントしていました。


やはり、先般の差別発言でブランドイメージを著しく傷つけてしまったことが原因のようです。
ジョン・ガリアーノ社の株式91%はクリスチャン・ディオール社が所有しているので、これで彼は完全に決別されたことになります。
騒動の前から準備されていた3月のパリコレでは、ショー形式からプレゼンテーションに即効切り替えられ、限られた一部の業界関係者のみを招待するという厳粛ムード。
もちろん、ここにもガリアーノの姿はありませんでした。
現在、ガリアーノはアリゾナのリハビリ施設でアルコール依存症の治療に励んでいるそうですが。。
この先、彼はデザインをすることがあるのか否か……?


フランスではユダヤ人差別を含む個人の出自や宗教に基づいた侮辱行為は罪となるそうで、近々ガリアーノは裁判所に出廷する予定だそう。
そしてガリアーノが去ったいま、次なる候補デザイナーは誰か?という噂がまことしやかに囁かれています。
他にもセリーヌやクロエなど……同グループのLVMHが他にもデザイナー交代を画策しているという仮説もあり。
またしても、デザイナーの椅子をかけた人間模様に変化の兆しがあるのか?
今後の動向が気になるところです。


最後に、トレダノ氏の言葉を。
「Diorというメゾンの心は、目に見えなくとも鼓動し続けています。それは日々、時を数えることなく勤勉に働き、メゾン設立者であるムッシュ・ディオールの価値観や展望を維持する数々のチームとアトリエ、裁縫師や職人によって成り立っているのです。あなた方がこれから目にすることは、これらの誠実で勤勉な人々の、素晴らしく創造的で並外れた努力の賜物です」


ファッションエディター&スタイリスト
近藤陽子

Fashion editor & Stylist
Yoko Kondo

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